今日のなめろう vol.4

彼の名は、なめろう。ときどき箱に入っている。

猫は箱が好きというのは、猫を飼っている人にしてみたら常識だ。

空いたダンボールがあれば寄ってきて、くんくんとその匂いを確認し、害がないという判断をするやいなやそっと中へ入る。

入り心地の良し悪しに、サイズはあまり関係ないらしい。

人間からすると狭そうに見えるが、当の本人(本猫?)は満足そうにくつろいでいる。

小さな箱に無理矢理収まったせいで、ほっぺが平常時の半分くらいになる。

いつもはふわふわの毛に覆われてむちっりとした顔をしているが、それは見かけだけで実際はほとんど空気なんじゃないか。

「猫は液体」なんて言われることもあるけれど、個人的には「猫の半分は空気」という説を推したい。

高いところから落ちても何ともないのは、たぶんきっとそのおかげだと思います。

【おまけ】

お気に入りのダンボールで作ってあげた家でくつろぐなめろう氏。かわいいね

文・写真:いくみ
美大で建築を学び、リノベーションやインテリアデザイン事務所を経てフリーに。現在は、グラフィックやウェブなどのデザインをメインにお仕事をしています。 ペットは猫の「なめろう」とイモリの「ゆきち」。
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こどもの日には、とらやの柏餅。

5月5日はこどもの日。

こどもの健やかな成長を祈願する日で、端午の節句とも呼ばれます。

五月人形を飾ったりこいのぼりを揚げたりといろいろな習慣がありますが、女ばかりの家庭で育ったせいもあってか、真っ先に思い浮かべるのはやっぱり柏餅。

柏は新芽が生えてくるまで古い葉が枝についたままになっているので、家系が絶えない・子孫繫栄の意味を込めて食べられるようになったそう。

粉のついた大福なんかに比べると手が汚れなくて食べやすいし、ほんのりとした柏の葉の香りが気持ちの良い初夏の陽気と相まって、食べ終わる頃にはちょっと幸せな気分になるのです。

今年のゴールデンウィークは甥の初節句のお祝いを兼ねて静岡に帰省していたので、前々から気になっていた、とらやの柏餅を買いに行くことにしました。

こちらが、とらや御殿場店

東京や京都以外にある、珍しい路面店です。

建築は「とらや 銀座店」「とらや 赤坂店」と同じ内藤廣建築設計事務所の設計で、木の外壁と細い十字の柱が印象的。

菓寮も併設されていて、ぜんざいやかき氷などをゆったりとした空間で愉しむことができます。

同じ御殿場市内にはその他にも、作りたての大福やどら焼きをいただくことのできる「とらや工房」や、とらやとパリのフレンチレストラン「Restaurant KEI」の小林圭氏が手がける「Maison KEI」など、とらやに関連する飲食店がいくつかあり、いずれも設計は内藤廣氏が手掛けています。

遠方からドライブで訪れる人も多いようで、この日も県外ナンバーの車を見かけました。

四季の富士山を表現した、限定の羊羹もあります。

駐車場からは大きな富士山を見ることができます。

数日前に雨が降ったので、この日はきれいな雪化粧に。

開店直後で他にも何組かお客さんがいましたが、あらかじめ電話で予約をしていたので待たずに購入できました。

こちらは三個入り。パッケージも素敵です。

経木のような箱に、柏の葉を思わせる深い緑の紐がかけられていました。

味の種類はこの二つ。

左の白い餅の中には御膳餡(こし餡)、右の淡い黄色の餅の中には味噌餡が入っています。

御膳餡は甘さ控えめでとってもなめらか。シンプルながらも、これぞとらやと言いたくなるような上品味わいです。

一方の味噌餡は、今回がはじめての体験でした。白あんのベースに味噌のこっくりとした旨味が加わって、みたらしのようなあまじょっぱい風味に。御膳餡とはまた違ったおいしさです。

この味噌餡の柏餅、調べてみると京都あたりではポピュラーなのだそう。

その餡を、柔らかくきめ細かな餅が包み込んでいます。

つやつやで食べるのがもったいないくらいの美しさに、仕事の丁寧さを伺うことができます。

口当たりもなめらかで、餅菓子にありがちなずっしりとした重さが一切なく、ぺろりと完食してしまいました。

関東地方と御殿場の店舗では餅製なのですが、近畿地方の店舗では外良(ういろう)製になるそうです。そちらもおいしそう。

ちなみに端午の節句限定のお菓子は、柏餅だけでなく粽(ちまき)もラインナップされていました。大きな笹の葉でくるくると巻かれた粽は、初夏にぴったりな爽やかな見た目で、手土産なんかにしても喜ばれそうです。

普段何気なく食べている和菓子ですが、季節の移り変わりを目でも舌でも愉しむことができる素敵な文化なのだなぁと改めて気付かされました。

来年のこどもの日も、またとらやに行くことになりそうです。

とらや 御殿場店

文・写真:いくみ
美大で建築を学び、リノベーションやインテリアデザイン事務所を経てフリーに。現在は、グラフィックやウェブなどのデザインをメインにお仕事をしています。 ペットは猫の「なめろう」とイモリの「ゆきち」。
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うつくしき郷土玩具 vol.3「猫だるま」

猫を飼いはじめてから、市場に溢れる猫モチーフのものが目に留まるようになりました。

それまでは、ほんとうに全く興味がなかったのに。

一度手を出したら最後、余計なものまでどんどん買ってしまいそうで自制をかけているのですが、唯一いくらでも買ってよいことにしているのが郷土玩具です。

こちらの招き猫も、以前紹介した起き上がり弘法師と同じく福岡市のお店・山響屋さんのポップアップイベントで入手したもの。

赤ら顔でまんまるおめめのぶち猫が、とぼけた表情のだるまを携えているかわいらしい人形です。

手に持ってみると軽くて張り子のようですが、ざらりとした手触りで何かちょっと違う。

聞けば「練り物」といっておがくずを固め形成する技法だそうで、埼玉県越谷市で作られている郷土玩具だそうです。

ひとつひとつ手作業で丁寧に絵付けをしているため、一体一体の表情がちょっとずつ違うのも愛らしく、どれにしようか迷うのもまた楽しい時間でした。

招き猫と達磨というふたつの縁起物がひとつになっている、最強のモチーフ。

眺めているだけで、ちょっと幸せな気分になります。

文・写真:toshimitsu kuramoto
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[動画]ゆかしいレシピ。洋梨とブルーチーズのロースト

ぽってりとした形がかわいい洋梨。

秋になると、ラ・フランスをはじめ様々な品種の洋梨が店頭に並びます。

そのまま食べてももちろん美味しいのですが、今回はワインのおつまみにもぴったりなローストに。

チーズを詰めて焼くだけの簡単レシピで、贅沢な一品が完成します。

材料 1人前

1.洋梨を切りましょう

洋梨をたて半分にカットして、芯と種をくるりと取り除きます。
今回は食感を残すために甘さ控えめの青い洋梨を使用しましたが、
デザート感覚で楽しむ場合は完熟の甘いものを使うと良いでしょう。

2.洋梨をトースターで焼きましょう

耐熱の皿(ない場合はアルミホイルでもOK)にカットした洋梨を載せ、
表面が焦げないようにオリーブオイルを塗ります。
果肉が柔らかくなるまで、トースターで加熱しましょう。
200℃(600W)で10分程度が目安ですが、お好みで調整してください。

3.ブルーチーズとくるみをのせましょう

加熱した洋梨をいったん取り出して、種をくりぬいた部分にブルーチーズを入れます。
さらに砕いたくるみをのせ、お好みでブラックペッパーをかけましょう。
皿も洋梨も熱くなっているので、やけどに気を付けてください。

4.さらに焼き色を付けて、仕上げましょう

トースターでさらに10分ほど加熱して、焼き色を付けたら完成です。
お皿に盛り付け、お好みではちみつをかけていただきましょう。
甘口のワインによく合います。

文・写真:いくみ
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簡単な下ごしらえで「鮭の白子」を楽しむ

秋は、美味しい旬の食べ物がたくさん。9月頃から出回り始める秋鮭も、そのうちの一つです。

産卵期の鮭は旨味たっぷり。ホイル焼きやムニエル、ちゃんちゃん焼きなどな美味しい食べ方がたくさんありますが、じつはその秋鮭、身だけでなく白子もなかなか美味しいのです。

鱈の白子よりもあっさりしていますが、旨味が凝縮されていてお酒のおつまみにぴったりな味わい。

お手頃価格で購入できるので、スーパーなどで見かけたらぜひ買ってみてください。

臭みが出やすい食材なので、簡単な下処理をしてから調理をしましょう。

鮭の白子の下処理

材料

1.塩をふって臭みをとります

白子をざっと洗い、ボウルに入れて塩大さじ2をまぶし、10~15分ほどそのままにしておきます。

臭みの元となるぬめりが出てくるので、しっかりと水で洗い流します。

匂いが強いので、ビニール手袋などを使うとよいでしょう。

2. 湯引きをします

小さめの鍋に水と酒を入れ、火にかけます。

沸騰したら火を弱め、洗った白子を入れて1分ほど茹でましょう。

表面が白くなったら、白子を取り出し冷水にさらします。

3. 血管を取り除きます

白子の赤黒いすじの部分(血管)を取り除きます。

包丁の先などを使っても良いのですが少し危ないので、つまようじなどの尖ったものを引っ掛けるようにして取ると良いでしょう。

血が残っていると臭みの原因になるので、流水できれいに洗い流し、キッチンペーパーで水気を拭き取ります。

これで下ごしらえは完了です。

すぐに調理をしない場合は、キッチンペーパーで優しく包みラップをして冷蔵庫へ。

日持ちしないため、翌日には使い切るようにしてください。

[おすすめレシピ]鮭の白子ポン酢

下処理をした鮭の白子を一口大に切り2~3分茹でた後、冷水にさらして締めるだけの簡単なレシピ。

お好みの薬味とポン酢、鮭と同じく秋が旬のすだちを絞っていただきます。

シンプルに素材の味を楽しむことができて、日本酒がすすみます。

[おすすめレシピ]鮭の白子と秋野菜のバター醤油ソテー

一口大に切った白子に塩少々で下味を付け、小麦と片栗粉を1:1の割合で混ぜたものをまぶします。

サラダ油を熱したフライパンでカリっとするまで焼いたら、仕上げにバターと醤油を加えて出来上がり。

今回は、秋が旬のさつま芋と蓮根も一緒にソテーしてみました。

根菜のみならず、きのこ類や春菊やほうれん草などの葉物野菜もよく合います。

白ワインのおつまみにも。

文・写真:いくみ
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今日のなめろう vol.3

彼の名は、なめろう。

ビビりな性格で、来客があると絶対にソファの下から出てこない。

インターホンが鳴れば、瞬時に玄関から一番遠いところに移動してそこから様子をうかがう。

中に鈴が入っていてチリリンと鳴るおもちゃのボールが怖いらしく、自分にむかって転がってくると逃げ回る。

にもかかわらず、普段の状態が無防備すぎる。なぜなんだ。

いつも、そこらへんの床に落ちている。

だらしなく腹を出し、虚無な顔をして。緊張感の欠片もない。

落ちているぶんには構わないのだけれど、物音を立てるたびに飛び起きるのはやめてほしい。

まるで被害者のような顔をしてこちらを見るけれど、分かっていたことじゃないの。

そこは通路なんです。なのになぜ、こちらが気を遣いながら通らなきゃいけないんだ。

そう思いながら、いつもふふ、と笑ってしまう。

きっと、これは心を開いた相手にしか見せない姿なのだろう。そう、信頼の証。

光栄です、と言いながら、今日も落ちてる猫を踏まないように気を付けて歩く。

文・写真:いくみ
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うつくしき郷土玩具 vol.2「起き上がり弘法師」

福島県会津若松市の郷土玩具といえば、首がゆらゆら揺れる牛の張り子「赤べこ」。

公園の遊具やプラモデルにもなっている人気の工芸品です。

ずんぐりしたフォルムとゆるーい動きは、見ているだけで癒し効果抜群。

ファンが多いのも納得できます。

しかし、会津若松には、そのさらに上を行く究極の癒し系張り子があるのはあまり知られていません。

その名も「起き上がり弘法師」。指で弾いて倒してもぴょいっと起き上がる、あの玩具です。

福岡市にある民芸品と郷土玩具のお店・山響屋さんのポップアップイベントで、ふと目に入ったこの張り子。

手作り感たっぷりのゆらいだかたちと、なんとも言い難い表情は、まさに癒し系。

親指の第一関節ほどの小さい人形ですが、しっかりと起き上がります。

これは絶対に買わなければ。

話を聞くと、家族の人数よりも一体多く迎えて幸せを祈る風習があるのだそう。

一体一体の個性が強すぎて選ぶのに時間がかかってしまったけれど、

そんなところも含め、愛おしく思えるのです。

文・写真:いくみ
美大で建築を学び、リノベーションやインテリアデザイン事務所を経てフリーに。現在は、グラフィックやウェブなどのデザインをメインにお仕事をしています。 ペットは猫の「なめろう」とイモリの「ゆきち」。
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今日のなめろう vol.2

彼の名は、なめろう。

我が家にやってきたのは生後五ヵ月頃で、いたずら盛りのやんちゃボーイ。

二歳くらいまでは元気が有り余っていて、何をしても楽しそうに遊んでいた。

猫じゃらしもボール遊びも大好き。

ただの紐やペットボトルのキャップみたいなガラクタでも、ちょっと投げたら喜んで追いかけてくれた。

マスキングテープの芯なんかも、よく転がるので良いらしい。

でも今の彼は、昔ほど遊ばない。

もうすぐ六歳になるので、人間でいうと四十路手前だ。そりゃそうか。

あんなに大好きだった猫じゃらしも、ちょっと目をやるくらいで飛びついてくることはない。

youtubeで野鳥の動画を流すか、レーザーポインターを使えば寄ってくる。

結局ね。デジタルか。

気持ちはわかるよ、人間も似たようなものかもしれない。

文・写真:いくみ
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[おうちでごはん] 栗の渋皮煮

秋を感じる食材の栗。

いろんな食べ方がありますが、時間に余裕がある時は渋皮煮がおすすめです。

かわいらしい形の栗を丸ごと頬張ると、とても贅沢な気持ちになります。

材料

1. 鍋にお湯を沸かす

沸いたら弱火にして、温度を保ちます。

2. 栗をお湯に浸す

[1]の鍋に栗(鬼皮付き)を数個ずつ入れていきます。

10分ほど浸した栗から鬼皮を剥いていくので、順次栗を入れるように注意してください。

3. 鬼皮を剥いていく

はじめに栗のお尻に浅く包丁を入れて、慎重に鬼皮を剥きます。(滑り止め軍手があると安心)

渋皮が破れてしまった場合は栗ご飯など、別の形でいただきます。

皮は滑りやすいので、怪我に注意

使いやすい包丁で、ゆっくり剥くのが一番大事です

4.鍋にたっぷりお湯を沸かす

重曹と鬼皮を剥いた栗を入れて10分ほど茹でます。

5.鍋ごとシンクに移す

鍋に細く水を注いでお湯と入れ替えます。

この時、直接水が栗に当たらないよう注意してください。(水流で形が崩れることがあります)

6.綺麗な水に入れ替わったら、再び鍋を火にかける

途中、灰汁が気になったら取り除くようにしてください。

7. 工程[5]と[6]を繰り返す

茹で汁が濁った黒色から、澄んだワイン色になるまで繰り返します。(2〜3回が目安)

最後は、茹で汁を半分だけ捨て、再び細く水を入れて素手で触れる温度まで冷まします。

8.竹串で表面の繊維と汚れを取る

表面の汚れは竹串を寝かせて、優しく擦り取る。溝の太い繊維は竹串を引っ掛けて取り除く

ここで丁寧に作業すると、綺麗な栗の模様が出てきます

9.栗を砂糖で煮る

綺麗な鍋に栗と砂糖(1/2の量)を入れて、ひたひたになるまで静かに水を注いで火にかけます。

煮立ったら、弱火にして砂糖(1/2)を入れて落し蓋をしてください。(クッキングシート、アルミホイルの中央に穴を開けて代用可)

10.煮汁がトロッとするまで煮る

煮汁の表面が沸き立たないような火加減を保ちます。とろみが出たら、火を止めてそのまま冷ましてください。

11. お酒を加えて保存する

完全に冷めた時点で煮汁と栗を清潔な容器に入れて、お酒を加えて保存します。
一晩置くと、甘みが栗に馴染んでより美味しくいただけます。

文・写真:まさき
毎日美味しいものを食べることを目標に、設計デザインの仕事をしています。
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うつくしき郷土玩具 vol.1「福獅子」

郷土玩具を紹介しているテレビ番組で、ちらっと映ったこの人形。

その後話題に出ることもなく、詳細不明のまま番組は終わってしまいました。

あれは一体なんだったんだ。

ゆるキャラか?何の生き物だ?というか、そもそも生き物なのか?

必死に検索をして調べた結果、大分県別府市で作られている土人形「福獅子」だということが判明。

この風貌で、なんと獅子だというのです。こんなにまるい獅子、今まで見たことがありません。

ほしい。ほしすぎる。どこへ行けば買えるのか。

これまた必死になって調べたところ、宮島にあるsignalという雑貨屋さんのオンラインショップで売っているのを見つけました。

やった!このコロコロとしたまるい獅子を手に入れることができる!

しかしその喜びも束の間、カートに入れようとするとそこにはSOLD OUTの文字が。

ああ、なるほどね。きっと入荷したらすぐに売れてしまう人気商品なのです。

残念。縁がなかったんだなぁ。

そう思って、諦めることにしたのでした。

それから数か月後、東京から来た友人と共に宮島散策へ行った時のこと。

ふと思い出してあの雑貨屋さんに立ち寄ると、いたのです、そこに。まるい獅子が。

「あの時SOLD OUTだったのは、こうやって直接迎えに来てほしかったからなんです」と言わんばかりのまっすぐな目で、こちらを見つめている獅子たち。

運よく入荷したばかりで在庫にも余裕があったので、友人とお揃いで購入することにしました。

以後、自室の飾り棚のいちばん良い席にこの二匹を並べておいて、仕事中にふと眺めては癒されています。

厄難を払い福を招いてくれると言っていたけれど、本当に?と疑いたくなるほど気の抜けた見た目の福獅子。

でも、そこにいるだけでなんだか心が満たされる、大切な存在です。

文・写真:いくみ
美大で建築を学び、リノベーションやインテリアデザイン事務所を経てフリーに。現在は、グラフィックやウェブなどのデザインをメインにお仕事をしています。 ペットは猫の「なめろう」とイモリの「ゆきち」。
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