こどもの日には、とらやの柏餅。

5月5日はこどもの日。

こどもの健やかな成長を祈願する日で、端午の節句とも呼ばれます。

五月人形を飾ったりこいのぼりを揚げたりといろいろな習慣がありますが、女ばかりの家庭で育ったせいもあってか、真っ先に思い浮かべるのはやっぱり柏餅。

柏は新芽が生えてくるまで古い葉が枝についたままになっているので、家系が絶えない・子孫繫栄の意味を込めて食べられるようになったそう。

粉のついた大福なんかに比べると手が汚れなくて食べやすいし、ほんのりとした柏の葉の香りが気持ちの良い初夏の陽気と相まって、食べ終わる頃にはちょっと幸せな気分になるのです。

今年のゴールデンウィークは甥の初節句のお祝いを兼ねて静岡に帰省していたので、前々から気になっていた、とらやの柏餅を買いに行くことにしました。

こちらが、とらや御殿場店

東京や京都以外にある、珍しい路面店です。

建築は「とらや 銀座店」「とらや 赤坂店」と同じ内藤廣建築設計事務所の設計で、木の外壁と細い十字の柱が印象的。

菓寮も併設されていて、ぜんざいやかき氷などをゆったりとした空間で愉しむことができます。

同じ御殿場市内にはその他にも、作りたての大福やどら焼きをいただくことのできる「とらや工房」や、とらやとパリのフレンチレストラン「Restaurant KEI」の小林圭氏が手がける「Maison KEI」など、とらやに関連する飲食店がいくつかあり、いずれも設計は内藤廣氏が手掛けています。

遠方からドライブで訪れる人も多いようで、この日も県外ナンバーの車を見かけました。

四季の富士山を表現した、限定の羊羹もあります。

駐車場からは大きな富士山を見ることができます。

数日前に雨が降ったので、この日はきれいな雪化粧に。

開店直後で他にも何組かお客さんがいましたが、あらかじめ電話で予約をしていたので待たずに購入できました。

こちらは三個入り。パッケージも素敵です。

経木のような箱に、柏の葉を思わせる深い緑の紐がかけられていました。

味の種類はこの二つ。

左の白い餅の中には御膳餡(こし餡)、右の淡い黄色の餅の中には味噌餡が入っています。

御膳餡は甘さ控えめでとってもなめらか。シンプルながらも、これぞとらやと言いたくなるような上品味わいです。

一方の味噌餡は、今回がはじめての体験でした。白あんのベースに味噌のこっくりとした旨味が加わって、みたらしのようなあまじょっぱい風味に。御膳餡とはまた違ったおいしさです。

この味噌餡の柏餅、調べてみると京都あたりではポピュラーなのだそう。

その餡を、柔らかくきめ細かな餅が包み込んでいます。

つやつやで食べるのがもったいないくらいの美しさに、仕事の丁寧さを伺うことができます。

口当たりもなめらかで、餅菓子にありがちなずっしりとした重さが一切なく、ぺろりと完食してしまいました。

関東地方と御殿場の店舗では餅製なのですが、近畿地方の店舗では外良(ういろう)製になるそうです。そちらもおいしそう。

ちなみに端午の節句限定のお菓子は、柏餅だけでなく粽(ちまき)もラインナップされていました。大きな笹の葉でくるくると巻かれた粽は、初夏にぴったりな爽やかな見た目で、手土産なんかにしても喜ばれそうです。

普段何気なく食べている和菓子ですが、季節の移り変わりを目でも舌でも愉しむことができる素敵な文化なのだなぁと改めて気付かされました。

来年のこどもの日も、またとらやに行くことになりそうです。

とらや 御殿場店

文・写真:いくみ
美大で建築を学び、リノベーションやインテリアデザイン事務所を経てフリーに。現在は、グラフィックやウェブなどのデザインをメインにお仕事をしています。 ペットは猫の「なめろう」とイモリの「ゆきち」。
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