今日のなめろう vol.3
彼の名は、なめろう。
ビビりな性格で、来客があると絶対にソファの下から出てこない。
インターホンが鳴れば、瞬時に玄関から一番遠いところに移動してそこから様子をうかがう。
中に鈴が入っていてチリリンと鳴るおもちゃのボールが怖いらしく、自分にむかって転がってくると逃げ回る。
にもかかわらず、普段の状態が無防備すぎる。なぜなんだ。
いつも、そこらへんの床に落ちている。
だらしなく腹を出し、虚無な顔をして。緊張感の欠片もない。
落ちているぶんには構わないのだけれど、物音を立てるたびに飛び起きるのはやめてほしい。
まるで被害者のような顔をしてこちらを見るけれど、分かっていたことじゃないの。
そこは通路なんです。なのになぜ、こちらが気を遣いながら通らなきゃいけないんだ。
そう思いながら、いつもふふ、と笑ってしまう。
きっと、これは心を開いた相手にしか見せない姿なのだろう。そう、信頼の証。
光栄です、と言いながら、今日も落ちてる猫を踏まないように気を付けて歩く。
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