うつくしき郷土玩具 vol.1「福獅子」

郷土玩具を紹介しているテレビ番組で、ちらっと映ったこの人形。

その後話題に出ることもなく、詳細不明のまま番組は終わってしまいました。

あれは一体なんだったんだ。

ゆるキャラか?何の生き物だ?というか、そもそも生き物なのか?

必死に検索をして調べた結果、大分県別府市で作られている土人形「福獅子」だということが判明。

この風貌で、なんと獅子だというのです。こんなにまるい獅子、今まで見たことがありません。

ほしい。ほしすぎる。どこへ行けば買えるのか。

これまた必死になって調べたところ、宮島にあるsignalという雑貨屋さんのオンラインショップで売っているのを見つけました。

やった!このコロコロとしたまるい獅子を手に入れることができる!

しかしその喜びも束の間、カートに入れようとするとそこにはSOLD OUTの文字が。

ああ、なるほどね。きっと入荷したらすぐに売れてしまう人気商品なのです。

残念。縁がなかったんだなぁ。

そう思って、諦めることにしたのでした。

それから数か月後、東京から来た友人と共に宮島散策へ行った時のこと。

ふと思い出してあの雑貨屋さんに立ち寄ると、いたのです、そこに。まるい獅子が。

「あの時SOLD OUTだったのは、こうやって直接迎えに来てほしかったからなんです」と言わんばかりのまっすぐな目で、こちらを見つめている獅子たち。

運よく入荷したばかりで在庫にも余裕があったので、友人とお揃いで購入することにしました。

以後、自室の飾り棚のいちばん良い席にこの二匹を並べておいて、仕事中にふと眺めては癒されています。

厄難を払い福を招いてくれると言っていたけれど、本当に?と疑いたくなるほど気の抜けた見た目の福獅子。

でも、そこにいるだけでなんだか心が満たされる、大切な存在です。

文・写真:いくみ
美大で建築を学び、リノベーションやインテリアデザイン事務所を経てフリーに。現在は、グラフィックやウェブなどのデザインをメインにお仕事をしています。 ペットは猫の「なめろう」とイモリの「ゆきち」。
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