香川のアートスポット、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館へ。

「現代アートの聖地」という印象が強い香川県。まず思い浮かぶのが直島をはじめとする瀬戸内の離島ですが、それ以外にもアートを楽しむことのできる場所がたくさんあります。丸亀市にある猪熊弦一郎現代美術館もそのひとつ。ファサードの大きな屋根が特徴的なこの建物は、国内外で美術館や公共施設などを数多く手掛けてきた建築家・谷口吉生氏による設計で、アートだけでなく建築ファンからも人気のスポットです。

JR丸亀駅の南口を出てすぐ、駅前広場に面した好立地。車でアクセスする場合も、JR丸亀駅前地下駐車場の駐車券を受付で提示すれば2時間無料になるので、気軽に立ち寄ることができます。

MIMOCA 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

まず最初に出会うのが、ゲートプラザの大きな壁画「創造の広場」。この日は猛暑日で、外に立っているだけでも汗が噴き出るような暑さでしたが、大屋根が日差しを遮ってくれたおかげでこの空間を楽しむことができました。雨の日も安心です。

エントランスホールから階段を上っていくと、吹き抜けをぐるりと囲うかたちの展示空間が。トップライトから降り注ぐ自然光がとても気持ちよく、開放的な雰囲気で作品を鑑賞できます。

この日、二階の展示室A・Bでは「猪熊弦一郎展 人や動物や物々」を開催していました。動物をモチーフにした作品の中でも、特に頻繫に登場するのが猫。写実的な表現ではないものの、一匹一匹のしぐさや表情は妙にリアルで猫好きの方にはたまらないはず。

二階展示室のベンチに座り空間全体を眺めていてふと気付いたのが、作品の周りにパーティションや立ち入り禁止のラインが設けられていないということ。作品に順番があったり、順路が決められているということもありません。これは「美術館は心の病院」と位置付けていた猪熊氏の意向だそうで、自分のペースで好きなように作品と向き合うことができます。この場所の持つおおらかな印象は、そのような想いがあってからこそ生まれたものかもしれません。

三階の展示室Cでは「加茂克也 KAMO HEAD」を開催していました。トップブランドのファッションショーなどで活躍したヘア&メイクアップアーティストの加茂克也氏の手がけたヘッドピースがずらりと展示されています。美術館での個展は初とのことで、オープニングイベントではファッションショーも行われたそう。細かな枠を設けずにアートをとらえる姿勢が、新たな出会いや発見につながるとあたらめて感じました。

ミュージアムショップでは、猪熊弦一郎や企画展に関するグッズがたくさん揃っていました。せっかくなので気に入ったポストカードをお土産に購入。すました顔の猫と二匹の魚が、ゆるいタッチで描かれています。ダイニングの壁に飾ってみましたが、さりげなくてかわいい。遠方でなかなか足を運べないという方は、ウェブショップからの購入もできます。

本州側から瀬戸大橋を渡ってすぐの丸亀市にある丸亀市猪熊弦一郎現代美術館は、瀬戸内海の波のように穏やかで優しい時間が流れる美術館でした。香川・丸亀と言えばうどんのイメージが強いかもしれませんが、腹ごしらえの後にはぜひアートも楽しんでみてください。

文・写真:いくみ
美大で建築を学び、リノベーションやインテリアデザイン事務所を経てフリーに。現在は、グラフィックやウェブなどのデザインをメインにお仕事をしています。 ペットは猫の「なめろう」とイモリの「ゆきち」。
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